北アルプスの奥穂高岳で、昨年の秋に1名の犠牲者を出す遭難事故がありました。 助けを求めていたのは聴覚障害者のグループ。手話や文字をオペレーターが通訳する「電話リレーサービス」を使えたおかげで残りのメンバーは救出されましたが、もしサービスが使えなければ、全員が犠牲になっていたかもしれないそうです。 聞こえる人であれば当たり前に使える電話ですが、実は聴覚障害のある人たちにとって電話は「使えない」「そもそも馴染みがない」ツールです。コミュニケーション上のバリアは緊急時には命に関わることもあります。このバリアをなくすために奮闘するNPOインフォメーションギャップバスター理事長の伊藤 芳浩さんにお話を伺いました。 ー 伊藤さんが取り組んでいるオンライン署名について教えてください 私たちの署名は、手話や文字をオペレーターが通訳する「電話リレーサービス」を24時間365日対応の公的サービスにしてほしいと求めるものです。リアルタイムで緊急の情報を伝えられる電話を使えないということは大変不便です。 海や山での遭難事故もそうですし、自宅で家族が倒れたのに119番通報できずに愛する人が亡くなってしまった、電話が使えたら助けることができたのに、ということが聴覚障害者ではめずらしくありません。電話ができないという理由だけで、すごく優秀な方が定年まで嘱託職員として働いているもったいない例もあります。このような社会の側のコミュニケーション上のバリアを無くして、誰もが気楽にコミュニケーションができる社会にしたい、というのが私たちの願いです。 ー 聞こえる人は、そもそも「電話が使えなかったら」なんて考える機会もなかったりしますね 私自身が生まれつきのろう者で、聞こえないために様々な苦労をしてきました。幼い頃には言語獲得のためにトレーニングを繰り返し、小学校ではいじめも経験しています。周りと同じようにコミュニケーションが取れないので「なんでさっき言ったことを守ってくれないの?」なんて当時は同級生に言われていました。コミュニケーション上のバリアで一番大きいのは孤独感です。ガラスの板の向こう側ではみんながわいわい会話しているのに、こちらでは内容に伝わってこないようなイメージというか・・・。でも、大人になって就職した会社には手話通訳があって、活躍の機会を与えられる経験をしました。コミュニケーションのバリアは個人の問題だけではなく、社会の問題でもあるんです。 ー 署名をたちあげた反響はいかがでしたか? 2014年に署名をたちあげて、2017年にオンラインと紙をあわせて8096名の名簿を総務大臣政務官に手渡しました。Change.orgを使ってよかったのは、小さな団体でも社会問題への意識が高い人たちに広く知ってもらえる発信ができたことです。「きょうだいの代理で電話をしていた負担が軽くなるのでとてもいい」など、当事者家族からのコメントもありました。2017年以降、海や山での聴覚障害者の遭難事故が報道されることが相次いだことから総務省でもワーキングチームが結成され、電話リレーサービスについて今年度中になんらかの方針が発表される見込みです。 このような動きにあわせて、聴覚障害者たちに電話リレーサービスを知ってもらう普及活動も進めているところです。生まれつき聴こえない人たちは、そもそも電話を使うことに慣れておらずピンときていない人たちも多くいます。アメリカでは当たり前に使えるサービスでも日本での知名度は低いため、地域のろうあ協会や手話サークルなどに出向いて講演をしています。 ー 今後の総務省の動きに注目が必要ですね!最後に、このインタビューを読んでいる方へひとことメッセージをお願いします。 コミュニケーションバリアがなくなれば、聴覚障害者は能力をフルに発揮することができます。職場で様々な配慮をしていただき、いろんなことを経験してもらえた自分だからこそ、次の世代も同じように生き生きと仕事ができる環境を作りたいと思ってNPOを立ち上げました。聴覚障害だけでなく、視覚障害をもつ学生の学習支援のために3Dプリンターを活用したらどうかとか、発達障害のある人のプレゼンテーションをどう向上していくか・・・といった幅広い視点で今は活動をしています。社会の中で変えたいなと思うこと、不便だなと思うことがありながら、気づかない人や声をあげられない人がたくさんいると思いますが、壁にぶち当たったとき、その壁を壊した後にはより良い社会がきます。まずは小さいことから初めてみませんか? ー 伊藤さん、ありがとうございました!
-
もし119番が使えないとしたら。オンライン署名で「電話のバリア」をなくす方法
Written by Change.org · May 15, 2019 10:01 am -
4月から化粧品の動物実験をピアスグループが廃止へ。 オンライン署名はどう企業を動かしたか?
この春から、大手化粧品メーカー「ピアスグループ」が化粧品の動物実験を廃止します。カバーマーク、ケサランパサラン、イミュなど人気ブランドを有する同社が大きな決断を下した背景には、動物たちの命を守ろうと呼びかけたオンライン署名の存在がありました。今回の変化を生み出した「Cruelty Free Beauty:美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会」(CFB)の亀倉弘美さん(写真左)に、成功までのいきさつをインタビューしました! ー 今回の成功おめでとうございます。企業にとっては、動物実験の廃止を決めるというのはけっこう大きな決断ですよね。 そうですね。これまで動物実験の問題に関心を払ってこなかった企業が、オンライン署名によって意識を変えて、対話のテーブルについてもらったのには大きな手応えを感じました。商品開発に動物実験を組み込んでいる場合、その計画を途中で見直すことは企業にとって簡単ではないかもしれませんが、「化粧品の動物実験廃止」というニーズをきちんと受け止めていただけた証拠だと思います。 ー そもそも化粧品の動物実験について国内ではどのような状況があるのでしょうか。 「なかなか一気には前に進まないな」というのが、長年取り組んできているなかでの感想です。生きているウサギの目に化学物質を点眼する、といった実験が世界中の化粧品業界で行われてきたのですが、欧米では1980-90年代に反対の機運が高まって、多くのメーカーが動物実験を廃止しました。EUでは法律で2004年から段階的に禁止し、2013年に最終的に完全禁止としたのですが、この動きを日本でも広げようと、2009年に私が所属しているJAVAという団体で、まず資生堂さん宛てにキャンペーンを始めました。EUが2009年から、EU以外の国で動物実験が行われた化粧品の輸入も禁止した、というタイミングです。結局、署名提出やデモ行進、会議での議論や要望を続けて、開始から4年後の2013年から動物実験を廃止するという決断につなげました。 ー 地道な取り組みをずっと重ねて来られたのですね。 その頃は、最大手である資生堂さんが変われば、他のメーカーもすぐに変わると思っていたんです。でも、2013年に資生堂さんが動物実験廃止を宣言しても、実際には他メーカーは慎重で、一気には変わりませんでした。そのあとChange.orgで個人の方が立ち上げられたKOSEさん(2013年)へのキャンペーンではCFBが署名の提出をさせていただき、2016年にはCFBでロート製薬さん(2016年)宛てのキャンペーンを立ち上げました。それ以外にもCFBで化粧品メーカーに働きかけを続け、それぞれ動物実験の廃止につながり、今回のピアスグループさん宛てのキャンペーンへと続いています。 ー 今回、キャンペーンの宛先をピアスグループにしたきっかけがあったのでしょうか。 消費者の方から私たちに情報提供があったのがきっかけです。「ピアスグループはまだ化粧品の動物実験をやっているらしい」ということを聞き、CFBで確認をしたところ、やはりまだやっていることがわかりました。過去にもJAVAでピアスグループさんには問い合わせをしたことがあって、そのときは日本の大手メーカー19社に一斉に問い合わせをした中でピアスさんだけ返答がありませんでした。きちんと対応してもらうために2018年9月にCFBでキャンペーンを立ち上げ、4ヶ月ほどで2万人を超える賛同が集まりました。 ー 先方の反応はいかがでしたか? 企業の側としては、やはりコメント欄が気になったようですね。「ピアスの化粧品を使っていたのに残念」「もう買いたくない」という顧客の声がダイレクトに並んでいて、それが日に日に増えていく様子はピアスさんにもインパクトがあったようです。連日のように役員会を開いて、この件を検討されていたことも後になってわかりました。署名の提出にお伺いし、その後もう一度話し合いの場を設けていただいて、2018年度末での動物実験廃止が正式に決まりました。署名に賛同した方々から「私も署名してよかった」「みんなの声で本当に変えられた」とたくさんの声もいただきました。 ー 多くの方の声が届いてうれしいです。最後に、このインタビューを読んでいる方へ一言お願いします。 「私なんて」とか「一人で声をあげても」と思うかもしれませんが、心を込めてサイトにコメントしてくださったみなさんの声、言葉に相手はきちんと目を通しています。「おかしいな」「なんとかしたいな」と心の中で思っていることを表現してみたら、自分と同じ思いを持っている人たちがたくさんいることに気づくはずです。想いが届いたとき、ものごとは変わっていきます。特に、私たちが取り組んでいる動物の問題は、動物自身は声をあげることができません。なので、どうか躊躇することなく声をあげてほしいと思います! ー 亀倉さん、ありがとうございました!
Written by Change.org · April 1, 2019 11:01 am -
ポール・マッカートニーを愛するファンがオンライン署名で訴えたこと
昨秋、怒涛のスピードで盛り上がり、成功宣言までたどりついたキャンペーンがありました。そのキャンペーンは、ポール・マッカートニーを愛する人たちによって立ち上げられたもの。キャンペーン「2014年のポール・マッカートニーさんの国立競技場公演中止は仮病であると誤解を招くような報道について、TBSは訂正して謝罪してほしい」を立ち上げたAさん、牧本雅弘さんのお二人にインタビューしました。 愛するサー・ポール・マッカートニーへの笑えないデマ ー まずはお二人が立ち上げたキャンペーンについて教えてください Aさん:このキャンペーンは2018年11月10日放送のTBS番組「新・情報7Daysニュースキャスター」の中で、出演者がポール・マッカートニーさんを公演ドタキャンの常習者だと誤解を招くようなコメントしたことについて、撤回と謝罪を求めたものです。2014年、ポールは国立競技場のライブをウイルス性炎症のために中止したことがあるのですが「このとき実は仮病で、本当は六本木で飲み歩いていたんじゃないか、そんな目撃情報がある」という報道をやっていたんですね。ファンの間では彼のライブに対する真摯な姿勢はよく知られていて、当時も重篤な病状を押してなんとか予定通り公演を行おうとしていたのに仮病などと言われ、しかもその噂を最後まで明確に否定しないまま番組が終わってしまったのをみて、これはないなと思いました。 牧本さん:ぼくもポールのファンで、ファンのみんなでコンサートの集合写真を撮ったり、交流を盛り上げたりするのが好きな人間です。ファン同士の繋がりがあるからだと思うのですが、放送の後に「あの番組に対する抗議をやろうよ。署名やらない?」ってDMが何通も来ました。「あなたなら署名を立ち上げられる!」なんて言われたり。その頃、ポールファンの集まるFacebookグループでは、たくさんのファンが放送に対して怒りの声をあげていたのですが、みんな自分ではやろうとしないのがなんというか・・(笑) でも、これだけ困っているファンがいて、テレビ局に抗議の電話している人たちもいるなら、その人たちのためにやるべきだと思いました。ぼく一人では出来ないので、放送後の火曜日にAさんに「署名やりませんか?」ってお声がけしたのが始まりです。 インターネットならではの繋がり ー その後、火曜に立ち上げて金曜には提出をしたというスピード展開でした。 Aさん:やるならすぐに立ち上げて、次の放送(土曜日)までに持ち込まないとダメだなと思ったんです。牧本さんから「署名やりません?」とメールが来たのが火曜日の朝で、昼にはChange.orgでキャンペーンを立ち上げていました。以前もChange.orgのキャンペーンに賛同したことがあってこのサイトを知っていたので。助かったのは、私たちが署名運動を立ち上げたことを知って、ファンの人から当時の詳しい事情について情報提供があったり、業界に詳しい人からは、先方が対応しやすいように、署名の提出先をしかるべき部署に絞った方が良いなど、適切なアドバイスをもらえたことですね。 ー 先方の対応はいかがでしたか? Aさん:キャンペーンを立ち上げた翌日にTBSに電話して「署名をやっている」と告げたら、お客様対応窓口ではなく、直接、情報考査部につながりました。この時点ですでに抗議の電話が殺到していて局としてもしかるべき部署で慎重に対応する必要があると認識していたのだと思います。またポールの個別事例というのではなく、二次情報の検証をせず、噂をまことしやかに報道することについて報道番組としての姿勢を問いました。問題を一般化することで、「おっしゃることはもっともです」と言われ、とても真摯に受け止めていただきました。金曜の署名提出の翌日TBSは「おことわり」と称して、番組の対応が不適切であったことをホームページ上で表明することになるのですが、署名提出の際にはこちらの言い分や指摘事項もすべて認めた上で、非常に反省されていることが伝わってきたので、私たちも納得しました。 印象的だったのは、「抗議運動が一元化されていた」と言われたことですね。個人の有志で始めたキャンペーンですが、結果として、抗議はしたいがどうしていいか分からないファンの人たちの怒りの受け皿にもなったのだと思います。署名をまとめて会いに行ったところ、非常に丁寧な応対を受け、直接対話をすることで、抗議側としても相手への理解と共感が生まれます。そうなると、ホームページの謝罪だけでは納得いかない、というファンに対しては、今度は我々が局側の姿勢を発信して理解を求める、といういつのまにか仲裁者的な役割を果たしていたんですね。一部のファンに多少の不満は残ったものの、短期間で終結できたことは双方にとってWin-Winだと思いました。その後、驚いたのは、番組ホームページに謝罪文が載ったことで、翌週の一般新聞各社の紙面に「TBSが誤解与えたと謝罪」と一斉に報じられたことです。テレビ局がホームページで謝罪するというのは、それだけ大きなことなんだと思うと同時に、この結果をみて、もういいだろうと思いました。 ー キャンペーンによって、番組制作側とのコミュニケーションが図れたのが素晴らしいですね!最後に、今回のキャンペーンを通しての感想を一言お願いします。 牧本さん:今回はポールに対するデマでしたが、真相がわからない噂をただ垂れ流す報道はポールに限らずとも良くないと思っています。このような報道をしないために今回の件を各社には参考にしてほしいです。 Aさん:長期の運動ではなく、短期にこのような動きができて、面識のない人たちからもアドバイスももらえるのはインターネットならではの新しいやり方だと思いました。日本の人たちは声をあげることを嫌がる風潮があるけれど、その風潮自体も変えていきたいですね。 ー 牧本さん、Aさん、ありがとうございました! Change.orgでは、今後も「変えたい気持ち」をカタチにできるよう、立ち上がった人々を応援していきます。Change.orgの運営は、月額1,000円からの会員にてサポートできますので、共感していただいた方はぜひChange.orgの支援のほど、どうぞよろしくお願いします。
Written by Change.org · February 5, 2019 2:38 pm -
「断れば自分の動画が流出するかも・・」性暴力にまつわる日本の状況を、私たちは変えられる
Change.orgでキャンペーンを立ち上げ、社会を変えようとしている人にお話を伺うシリーズ。今回は、性暴力のない社会を目指して活動する中野宏美さんにインタビューしてみました。 中野さんが始めたキャンペーンは、ある「ひどい裁判」に関するものでした。 盗撮ビデオで脅される。さすがにこれはないだろう ー 中野さんの今回のキャンペーンについて教えてください。 宮崎県で2015年、性犯罪事件の被疑者側弁護士が「犯行の様子を盗撮したビデオ原本の処分と引き換えに裁判を取り下げる」ことを被害者側に求めるという事件が起こりました。示談しなければこの盗撮動画がどうなるかはわからないと……。これ、市民の立場で考えれば脅し以外の何者でもないですよね?このビデオはプライベートの空間で撮影されており、罪に問えないため、警察も被疑者側からビデオを取り上げることができませんでした。もともと性犯罪裁判については「被害者側に対し、事件に関係のない過去の性行為について尋ねる」など、被疑者側の弁護について多くの問題があると考えていましたが、さすがにこれはないだろうと思い「被疑者側弁護士の懲戒処分」「相談窓口の設置」「弁護士への研修の徹底」を求めるキャンペーンを立ち上げました。 ー キャンペーンを立ち上げてみて、どうでしたか? まず1週間で1万人を超える方から賛同が集まったことに驚きましたね。多くの人がこのニュースに驚き 「これはみんなが求めている弁護の方法ではない」と受け止めてくれたことに力づけられました。女性以外からの賛同も多かったですね。「これは許せない!」と。多くの人たちの「私たちは社会をもっとよくしたい」という思いをChange.org のキャンペーンを通じて一つにすることができたのが、結果として裁判所にも届いたんじゃないかと思います。 ー 今年に入って、画期的な判断が下されました。 「最高裁がビデオ原本の没収を可能とする判断を下す」という、まったく予想していなかった結果が出ました。 容疑者はビデオを手放すことを頑なに拒み、法律の不備により警察もそれに手出しできない状態が続いていたのですが、裁判所が「事件の証拠として認め、没収する」という画期的な決定を下したのです。「こうきたか!」と思いましたね。私たちは被害者の状況を踏まえた弁護のあり方を問いましたが、それが「ビデオ原本の没収」という、思ってもみない形で実現しました。裁判官や検察官など゙ この事件に携わった皆さんの頑張りがあってこの判断が下されたのだと考えています。本キャンペーンが、何か少しでも判断を後押ししたのであれば、本当に嬉しいです。一緒に「おかしい」と声をあげてくださった皆さんの成果ですね。 当たり前のことを当たり前に ー 中野さんは性暴力のない社会を目指して活動をされています。性暴力を取り巻く日本の現状をどう見ていますか? この裁判もそうですが「プライベートの空間で撮影された性的動画や写真は、刑法上の罪に問えないことがある」など、時代やニーズに法制度が追いついていないと感じることは多くあります。性暴力被害者に対する執拗な攻撃も、本当に悲しく思っています。被害を訴えると「名前と顔を出せ」と言われ、いざ名前と顔を出して訴えたらバッシングされる。性犯罪について声をあげたジャーナリストや、ブロガーへの中傷もひどいですよね。他の犯罪、たとえば強盗事件であれば、被害者に対し「名前と顔を出せ」とか「どんな服を着ていたか」なんて問われません。性暴力だけ特別扱いされる社会で、市民が一体となった「性暴力をなくそう」という議論には、なかなか進まないことを感じています。 ー そんな中で中野さんが活動を続けておられるエネルギーは、どこから湧いてくるのでしょうか。 当たり前のことを当たり前にしたいだけなんですよ。性暴力が許容され、被害者がバッシングされる社会は当たり前ではない。だからそのためにできることを進めたいと思っています。性暴力のない社会を目指す「しあわせなみだ」がNPO法人化して今年で7年になりますが、今後は障がいを持つ方が性犯罪被害者として法律に位置付けられるよう、キャンペーンを展開していきたいと思っています。体の自由が効かなかったり、独特のコミュニケーションを持つ障害につけこんだ性暴力は珍しくなく、海外では、障がいがあることが性暴力のハイリスク層であることが調査等で明らかにされています。しかし、今の日本では障害を考慮した刑法になっておらず、障害者が不利な扱いを受けることが少なくありません。2年後に見直しが検討されている刑法性犯罪改正にあわせて、この問題に注目してくれる人が増えることを願ってます。 ー 中野さん、ありがとうございました。 いかがだったでしょうか。今回のインタビューを通して、改めて感じたのは性暴力をめぐる制度の不十分さでした。最高裁が判断を下すまで性暴力の加害者が盗撮ビデオを保持し続けた事実にはズシンと重たいものがあります。こんな状況だからこそ、多くの人々が声をあげ「変えよう」と意思表示をすることの大切さを改めて感じました。 中野宏美さんの団体NPO法人「しあわせなみだ」のHPはこちらから *Change.orgでは、今後も「変えたい気持ち」をカタチにできるよう、立ち上がった人々を応援していきます。Change.orgの運営は、月額1,000円からの会員にてサポートできますので、共感していただいた方はぜひChange.orgの支援のほど、どうぞよろしくお願いします。
Written by Change.org · September 18, 2018 11:40 am -
アカチャンホンポ、子育てするすべての人を応援へ
「チェンジメーカーストーリー」は、Change.orgのキャンペーンを立ち上げた人たちに話をうかがい、想いや戦略を紹介してもらう企画です。 今回は、先日「アカチャンホンポ」を動かしたキャンペーンの発起人である早川菜津美さんに語っていただきました。アカチャンホンポのオリジナル商品「水99%Super」シリーズのおしりふきを愛用していた早川菜津美さんは、商品に書かれたメッセージ「アカチャンホンポは全国のお母さんを応援します」を見るたびに、違和感を抱いていたそうです。その理由は?キャンペーンを始めてみてどうだった?その想いを伺いました。 夜中にオムツがえをしているとき、気になったキャッチコピー ー 早川さんが立ち上げたキャンペーンについて教えてください。 このキャンペーンは、アカチャンホンポが販売しているおしりふきに添えられたメッセージ「アカチャンホンポは全国のお母さんを応援します」を、子育てするみんなを応援するものに変えてほしいというものです。私は0歳の赤ちゃんを育てていて、夫の仕事が忙しいことからワンオペ育児状態であることもしばしばあったのですが、夜中に赤ちゃんのおむつを変えているときにこのメッセージが目に入ると、やっぱり気になったんですよね。確かに私は母親で、おむつを変えている。でも、社会から「おむつを変えるのはお母さん。お母さん頑張って!」と言われるのはなんか違うなと思ったんです。 子どもを産んでから「お母さんが頑張りなさい」という無言のプレッシャーはたくさん感じてきて、つらいなあと思っていました。どの育児関連用品をみても、お母さん向けのメッセージばかりなので、これは問題があるんじゃないかなと思って、友人に話してキャンペーンを立ち上げました。 ー 疑問に思ってすぐにキャンペーンを立ち上げられるのはすごいですね! 子どもが生まれるまでは友達に愚痴っておしまいだったんですけど、やっぱり後の世代には同じ想いをさせたくないなと思ったんですよ。私の子どもは女の子なんですけど、産まれて3日目ぐらいのとき、病院から「何時にミルクあげて、何時に寝たか記録を取るようにしなさい。将来この子が子育てするとき役に立つから」と言われたんです。娘は産まれて間もないのに、もうそんな決めつけをされている。生後3日なのに(笑)もともとChange.orgで簡単にキャンペーンが立ち上げられることは知っていたので、なにかひとつでも変えられることがないかなと思って、数時間で「おしりふき」のキャンペーンを立ち上げました。 アカチャンホンポさんならやってくれるかも ー キャンペーンの対象を「おしりふき」に絞った理由もあったのでしょうか? 「頑張るのはお母さん」みたいな社会の決めつけを変えたい、というのは漠然としたメッセージになりそうだと思ったので、まずはひとつの成功体験を作りたいなと思って、アカチャンホンポさんの商品を選びました。アカチャンホンポさんならやってくれるんじゃないかと期待していたんです。ホームページを見ても、他の育児用品の企業みたいに母親ばかりを押し出したメッセージはなくて、みんなの子育てを応援するという方針が伝わってきました。このおしりふきはすごく売れている自社ブランドの商品で、インパクトがあると思いました。 ー 実際にキャンペーンを立ち上げてみてどうでしたか? 最初は集まらないんじゃないかと不安だったんですが「100名でも集まればひとりでカスタマーセンターに行くより意味があるだろうな」と思ってはじめました。それが最終的には5000名ほど集まったのですが、うれしかったのはコメント機能ですね。励みになりましたし、知らないことを教えてくれる人もいました。私と友人たちで、今回のキャンペーンをきっかけに新しく子育てとジェンダー・家族の多様性について考える「baby step」という団体を立ち上げたのですが、そのネーミングもChange.orgのキャンペーンに寄せられた「子育てが母親にのみ偏っているのが当たり前でなくなるような世の中にしていくには、こういう運動はまさにbaby stepだ。子育てだけに」というコメントから頂いたんですよ。 これからも、子育てする全ての人がジェンダー観の押し付けや偏見から自由で楽しく暮らせるように、少しづつやれることをやっていこうと思います。 ー 早川さん、ありがとうございました! 【関連記事】育児は「お母さん」だけの責任?⇒署名受け、アカチャンホンポがパッケージ変更(ハフィントンポスト日本版 2018年7月4日)アカチャンホンポが「お母さんを応援」という表記を消したわけ(バズフィードジャパン 2018年7月5日) *Change.orgでは、今後も「変えたい気持ち」をカタチにできるよう、立ち上がった人々を応援していきます。Change.orgの運営は、月額1,000円からの会員にてサポートできますので、共感していただいた方はぜひChange.orgの支援のほど、どうぞよろしくお願いします。
Written by Change.org · July 20, 2018 3:10 pm -
ある日、学校が軍事施設になったら 。高校生、世界の子どものために立ち上がる
こんにちは。Change.org新メンバーの遠藤です。 東京では過ごしやすい気候が続いていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。 本日は、Change.orgユーザーの皆様に、Change.orgで先月キャンペーンを立ち上げた高校生たちへのインタビューをお届けします。日本の高校生にとって学校が「勉強するところ」なのはあたりまえのことですが、紛争地域の子どもにとっての学校はしばしば「軍事施設」です。 教室が兵隊に占拠され、校庭では射撃訓練が行われる。軍事施設となった学校は爆撃のターゲットとなり、巻き添えになる子どもたちもいます。そんな状況をなんとかしたいと高校生たちが始めたのが、学校の軍事利用を禁止する「学校保護宣言」に日本政府が調印することを求めたキャンペーンです。 発起人である高校3年生の小林さんと桶谷さんに話をうかがいました。 ー ふたりがそもそも国際問題に興味を持ったきっかけを教えてください。 小林さん: 小学生のときにベトナムに住んでいて、孤児や戦争で腕を失った人たちを見ていたので戦争や貧困といったテーマには当時からぼんやりと関心がありました。大きかったのは、中学に入って栗山さやかさんの『なんもないけどやってみた プラ子のアフリカボランティア日記』 (岩波ジュニア新書、2011年)を手に取ったことですね。渋谷の「109」で働いていたギャルの人が友人の死をきっかけに世界一周に出て、アフリカでいろんな問題を目の当たりにしてショックを受ける実話なんですけど、彼女はそこから一生懸命勉強をしてNGOを立ち上げるんです。「これは自分のバイブルだ」と思って、それから栗山さんの本は全部読んで、本棚に並べています。 桶谷さん: インターナショナルスクールの幼稚園に通っていたとき様々な外国のお友達ができたことから、自然と国際問題などに興味を持つようになりました。中学に入学してからは、模擬国連に参加したり、アイルランドへ1年間留学したりして、さらに関心が強まりました。アイルランドには移民も多く、同級生の中にはナイジェリアでは危険で暮らせなくて逃げてきた子もいたんですよ。大好きだった『ハリーポッター』シリーズでハーマイオニー役をしていたエマ・ワトソンが国連でスピーチをしていたのにも刺激を受けました。 ー 今回の署名は5月末時点で11,000人を超える方からの賛同を得ています。キャンペーンを立ち上げてみて周りの反応はいかがでしたか? 小林さん: 力になりたいけど何をしたらいいかわからないという人たちに「Change.orgの署名を広めて話題にしてほしい」と頼んで、どんどん活動を広げていけるのがよかったです。学校の友達がFacebookで話題にしてくれたり、Facebookをやっていない子もLINEのグループで周りに広めてくれました。 桶谷さん: 家族や友人、またその友人が積極的に活動を広げて下さり、応援してくれました。弟や塾の友人は各々の学校で活動のプレゼンをしてくれ、沢山の方々の協力を得ることができました。人の温かい優しさに触れることができる、貴重な機会になりました。 ー キャンペーンの手応えはいかがでしたか? 小林さん: 紙で集めて「鯉のぼり」のデザインにした署名を5月のはじめに防衛省に提出しにいきました。Change.orgで集めた1万人を超える署名は、外務大臣に直接提出したいと思っていて、現在コンタクトを取ろうとしています。 桶谷さん:防衛省で担当してくれた方々は優しかったんですけど、質問してもいまいちはぐらかされてしまう感じがありました。「なぜ調印できないんですか?」と尋ねても、五分くらいのとても長い回答が返ってきてしまって、何を質問したか忘れてしまうほどでした。学校保護宣言の調印していない理由としては「有事の際に学校の利用が制限されてしまうから」ということでした。「え、日本の学校を軍事利用するつもりなの?」とおもいました。 小林さん: 有事の時に、日本の学校を自衛隊が使ったら、敵軍から学校が爆撃のターゲットになってしまうので、高校生としてはとても怖いです。学校保護宣言のガイドライン1では開講中(生徒が授業を受けている)の学校の軍事利用を禁止していて、ガイドライン2では退避後の学校は最小限度で使っていい事になっているんです。この内容と防衛省の方の発言をあわせて考えると、「開講中の学校を軍事利用する予定がある」と言われている気がして、おそろしく思いました。G7で学校保護宣言に調印していないのは日本とアメリカだけで、軍事行動をしているイギリスだって調印しています。他の国がこれだけ調印している中で、日本ができない理由はないんじゃないかって、シンプルに私たちは思っています。 ー 最後に、これを読んでいる方々に向けてひとことお願いします。 桶谷さん: 「微力だけど無力ではない」と思って私たちはやっています。Change.orgの署名も、クリックしたらひとりは「1」にしかならないじゃないですか。それが10,000名以上の賛同になって、学校保護宣言について知ってくれる人がこれだけ増えた。私たちも最初はここまで学校保護宣言についての活動が大きく展開されていくとは思っていなかったけど、予想していたよりずっと多くのことができている事実があることは知ってほしいです。 小林さん: 知らなかったことを知って、おかしいと思ったり、怒りを覚えたりすることは、邪 魔なことではないし、それをストレートに表現することは大切だと考えています。大人はそれぞれ立場があるけど、高校生は率直におかしいことはおかしいとまっすぐに言えます。「おかしいよね?変えられるよね?」って。そのまっすぐさが他の人たちに届くことで、変えられることも結構あるなと感じています。私たち、学校を軍隊に占領されて、怖い思いをしている子どもたちがいて、なんとかしたいだけなんですよ。 ー 小林さん、桶谷さん、どうもありがとうございました! スタッフより 高校生たちの話を聞きながら、自分が高校生だったときのことを思い出しました。「アメリカ同時多発テロがあってイラク戦争が始まって〜」ということを二人に話すと「9・11をリアルタイムで経験しているんですか」と驚かれて、こっちもビックリしました(ジェネレーションギャップですね)。 さておき、知らないことを知りショックを受けたあとで、どんな行動をするのかは私たち一人ひとりに委ねられています。彼女たちは、現実を変えようとすることを選びました。みなさんはいかがでしょうか。 Change.orgでは、今後も「変えたい気持ち」をカタチにできるよう、立ち上がった人々を応援していきます。Change.orgの運営は、月額1,000円からの会員にてサポートできますので、共感していただいた方はぜひChange.orgの支援のほど、どうぞよろしくお願いします。 (Change.org 遠藤)
Written by Change.org · June 4, 2018 2:10 pm -
自分の感受性を疑わないでほしい 父子家庭の支援をやってきた村上さんが、いま思うこと
「チェンジメーカーストーリー」は、Change.orgのキャンペーンを立ち上げた人たちに話をうかがい、想いや戦略を紹介してもらう企画です。 今回は全国父子家庭支援ネットワーク代表の村上吉宣さんのインタビュー後編です(インタビュー前編記事はこちら) ■ 困っている実態に制度を合わせて ー 児童扶養手当を父子家庭にも支給させることに成功してから8年。今回の村上さんのキャンペーンについて聞かせてください。 現在やっているキャンペーンは、妻と死別した父子家庭のうち遺族年金をもらえない方々に関するものです。2014年春に、これまで母子家庭のみに支給されてた遺族年金が父子家庭にも適用されることが決まったのですが、それ以前に妻を亡くしている夫は制度からこぼれ落ちています。たとえば東日本大震災で妻を亡くした方たちも、こぼれ落ちた人たちの一部です。 僕は宮城県に住んでいるので、震災で妻を失い父子家庭となった方たちの相談も受けてきました。「妻ではなく自分が死ねばよかったんだ」なんて声を聴くこともあります。亡くなった時期ではなく当事者たちの実態、困っている現状にあわせて制度が作られるよう問題提起をしたかったのが、今回のキャンペーンの根底にあります。 ー Change.orgでキャンペーンを立ち上げての感触はいかがですか? Change.orgは困っている当事者からのナマの声やコメントが集まりやすいサービスだなと感じています。ソーシャル署名には「どれだけ集めたか」という数よりも大事なことがあると思うんですよ。数を集めて押し切るだけなら、それはただの圧力団体かもしれない。でも、こういう課題があることを多くの人に知ってもらい、伝えたいことを訴えられる。それに共感が集まるということが大切だと思っています。 ■ 自分の感受性を疑わないでほしい ー 最後に、これを読んでいる皆様にひとことお願いします。 昔、尾崎豊や忌野清志郎のロックバンドが流行りましたよね。今の40代〜50代の人たちは熱狂的なファンだった方も多いと思います。大人が敷いたレールなんてクソ食らえって音楽で、それを聴いていたときの感性はみんな間違ってなかったのに、かつてファンだった大人たちは人生のどこかで諦めたんですよね。 「これっておかしいんじゃないか」「自分は本当はこうしたい」と思ったことは、結局は次の世代の子ども達が生きやすい社会にしていくために必要なことだと思うんです。だから自分の感受性を疑わないでほしいってことを言いたいです。でも、校舎の窓ガラスを割ってケンカしても良いことはないから、代わりに提案できたらいいですね。 聞けばいいんですよ。専門家ってインターネット上にもたくさんいるでしょう。大人って分からないことを聞かない人が多いんですけど、聞くことを繰り返していけば、だれもが「そうだよね」って言ってくれる言葉を作れると思うんです。今は、提案したことを聞いてくれる大人がいる時代だと思いますよ。 ー ありがとうございました! いかがだったでしょうか? インタビューでは、私たち一人ひとりが困っていること、悩んでいること、分からないことについて「他の人たちに投げかけてみてもいいんだよ」というメッセージがこめられているように感じました。以前よりも、お互いの連絡がとりやすくなった時代だからこそChange.orgなどのサービスを使って、暖かいつながりが増えていくことを期待しています。 そして、村上さんが今取り組んでいるキャンペーン、こちらの成功も願っています! 2014年4月以前に妻を亡くし遺族年金の対象とならない父子家庭の父と子を救いたい!特例法にて救済を求めます!
Written by Change.org · May 23, 2018 11:17 am -
「助けてほしいと思ってしまうオレはどこか狂っている?」 ひとりの父親が父子家庭の支援にたちあがった理由
「チェンジメーカーストーリー」は、Change.orgのキャンペーンを立ち上げた人たちに話をうかがい、想いや戦略を紹介してもらう企画です。 今回は、10年前にたった一人で立ち上がった全国父子家庭支援ネットワーク代表理事の村上吉宣さんに語っていただきました。村上さんは平成22年に、それまでは母子家庭にしか支給されなかった児童扶養手当を父子家庭にも支給できるよう政府に働きかけ、それを実現させた立役者のひとりです。 村上さんの現在たちあげているキャンペーンはこちら:2014年4月以前に妻を亡くし遺族年金の対象とならない父子家庭の父と子を救いたい!特例法にて救済を求めます! ■「それは、だれも声をあげてこなかったからだよ」 家族と団欒する村上さん(写真左) ー 村上さんが10年前に声をあげ始めたきっかけを教えてください うちは子どもが二人いる父子家庭なのですが、上の子が幼くして白血病になって、病院に付き添いが必要になったんです。僕は基本的に仕事人間。男は仕事してナンボだと思っていたのに、それができなくなりました。生活保護を頼っても、父子家庭の事情は理解されにくく、病院で「お父さんもお子さんと一緒に頑張っていますね!」なんて励まされても落ち込んでしまう日々です。福祉制度を頼らざるを得ない一方で、だれかに助けてほしいと思ってしまうオレはどこか狂っているんじゃないかって思っていました。子どもが休み休み学校に行けるようになっても、子どもに合わせられる仕事が無い。コールセンターは女性だけで、ヤクルトレディはあっても「ヤクルトマン」はありませんでした。 そんな中「自分はおかしいんですかね」「男として間違ってますかね」と大学の先生や母子家庭支援をしている人に尋ねると、みんな口々に「間違っていません」と言ってくれたんです。「おかしくないなら、どうしてこんなに大変なんですか」と尋ねると「それは、だれも声をあげてこなかったからだよ」って。まずはどんな形でもいいから会を立ち上げるように言われました。これがスタートです。 ー それから数年で、民主党政権時に父子家庭にも児童扶養手当が支給されるようになりました。 全国の父子家庭の人たちでメディアに顔を出したり政治家に要望したり、みんなが動きました。民主党の勉強会で父子家庭の問題を取り上げてもらったのがきっかけで、民主党のマニフェストにも児童扶養手当を父子家庭にも拡大することが載りました。 運動をやったことがなかったので、僕は「生活保護を受けていて子どもが白血病で〜」とか大変な要因がいっぱいある中で、「全部顔出し・実名公表でいいので、その代わりに児童扶養手当のことをメディアで取り上げてください」と書いたものを政治家の出ている報道番組などにとにかく送り続けていました。そこから報道してもらったり、政治家に繋いでもらったり。このとき思ったのは「ああ、日本人って優しいな」ということです。 僕は小学校3年生までしか学校に行っていません。だから法律を読み解くとか、要望書を書くとかも大変で、読めない漢字もたくさんあったんですが、みんな分からないことは教えてくれるんですよ。いっぱい蛍光マーカーを引いて、何回も繰り返し読んで、制度について勉強しました。 (村上さんの今回のキャンペーンについては後半の記事へどうぞ)
Written by Change.org · May 23, 2018 11:16 am -
110年ぶりの刑法大幅改正。それを後押しした「チームワーク」とは?|ジャーナリスト 治部れんげ
今年の6月、日本の刑法の性犯罪規定に、制定後110年の中で類のない大幅な改正がなされました。 この実現を後押ししたキャンペーンが、Change.orgも活用していたビリーブキャンペーンだったことから、Change.orgは7月にキャンペーンの成果報告会を行いました。 このイベントで企画とモデレーターに関わってくださったジャーナリストの治部れんげさんに、イベントの内容をレポートしていただきました。 イベントに来られなかった方も、いらした方で内容をもう一度思いだしたい方も、ぜひご覧ください。 今年6月、刑法の性犯罪規定が改正された。日本の刑法性犯罪規定は110年前に作られたもので、これまで大きな改正はなかった。今回の改正は、欧米先進国と比較すれば不十分ではあるものの、ようやく一歩を踏み出した。 【刑法の性犯罪規定改正のポイント】 「強姦罪」とされていた罪の名称が「強制性交等罪」に変わった 強制性交等罪の刑期の下限が懲役3年から5年に引き上げられたこと 強制性交等罪の被害者には、女性以外も含まれるようになったこと 被害者が告訴しなくても、検察が加害者を起訴できるようになったこと この改正を後押しした人がいる。彼・彼女らは刑法の性犯罪規定を改正するため、「ビリーブ」と名づけたキャンペーンを展開。ソーシャル署名Change.orgの活用に始まり、国会議員へのロビイング、世論を盛り上げるためのイベントを行った。 実際に「法律の改正」という大きな成果を得た「ビリーブ」キャンペーンは社会運動の成功事例と言える。 キャンペーンをサポートしたChange.org広報の武村若葉さんは「法改正という大きな成果もすばらしいですが、問題の認知を広げるためにオンライン署名やアートパフォーマンス、ワークショップなど様々な手法をつかって、関心のなかった人を振り向かせる工夫がたくさんされています。Change.orgで立ち上がるたくさんのキャンペーンをみてきていますが、これほど『語りかける』こと、『巻き込む』ことに注力したキャンペーンは珍しい。社会に働きかけたいと思う人にはぜひ参考にしてほしい事例です」とこのキャンペーンを評価する。 そこでChage.orgでは、7月16日にキャンペーンの成果報告会を開催、キャンペーンの中心メンバー5名が登壇し、戦略の立て方やチームビルディングについて話した。筆者はこの報告会に企画から関わり、当日はモデレーターを務めた。この記事では、報告会のエッセンスをお伝えする。 刑法性犯罪規定の改正を求める「ビリーブ」キャンペーンには、4つの団体が参加していた。明日少女隊、NPO法人しあわせなみだ、性暴力と刑法を考える当事者の会、ちゃぶ台返し女子アクションである。4団体は以前から性犯罪や性虐待の問題に取り組んでおり、イベントなどで顔を合わせ話すうちに「志は同じ」と気づいていく。刑法の改正に向けて一緒に取り組むため、2016年9月半ばに4つの団体のコアメンバーが集まってミーティングをした。 「このミーティングが、とても重要でした」と、ちゃぶ台返し女子アクションの鎌田華乃子さんは振り返る。この場で皆がひとつのゴールに向かうと決意したためだ。参加メンバーの中には、性被害の当事者もいれば、被害者支援に携わる人、世論の形成に関心がある人もいた。 それぞれがこのテーマに取り組むモチベーションについて話した後に、皆が合意できる最低ラインを決めた。それは、少なくとも2017年の通常国会で刑法改正を実現させること。また、可能であれば、改正案をより理想に近い内容に修正するよう働きかけること、とした。 目標を決めた後は、戦略的なアクションを積み重ねていった。法律を改正するためには国会議員の理解が必要だ。プロジェクトのメンバーは、合計45人の国会議員に直接面会して性犯罪被害の実態を伝え、刑法改正の必要を訴えた。与党にも野党にも足を運び、党派を問わず味方になってくれそうな人には会いに行った。ロビイングの過程でChange.orgで集めた署名約3万筆(提出時)を金田勝年法務大臣(当時)に手渡すことができた。 議員との面会は、性暴力と刑法を考える当事者の会の山本潤さんが中心になり、「だれに働きかければ改正を実現しやすいのか」をチームで話し合いながら動いた。被害当事者で関連の著作もある山本さんが自身の体験を話したり、複数の当事者の話を伝えながら法律改正の必要性を冷静に伝えた。山本さん達の話は議員の心を動かし、紹介が紹介を呼ぶ形で多くの議員と話をすることができた。 山本さんと共に議員を訪問した、しあわせなみだ代表の中野宏美さんは「『自分たちはロビイングの素人なので、分からないことは議員に教えてもらう』といった謙虚な態度で臨むよう心掛けた」。実際、刑法改正後、何人かの議員にお礼に行った際、中野さんはある議員から「きみたちは明るかったから良かった」と言われたそうだ。 深刻な社会問題に取り組み、改善・解決のために活動しながら「明るさ」や「謙虚さ」を保つのは簡単なことではない。特に、議員など意思決定権者と面会する際、社会問題の解決を急ぐあまり相手を責めてしまったり、会う前から対立的な姿勢を取ってしまったりすることもある。目標は決して見失わず、コミュニケーションは冷静かつ丁寧に。これは今後、違うテーマでキャンペーンを始めたい人にとっても参考になるだろう。 ところで「ビリーブ」キャンペーンが成功した要因として、政治家だけでなく普通の人を広く巻き込んだことがある。特に有効だったのは、戦略立案の最初に「アート」を取り入れたこと。フェミニストアーティストのグループ「明日少女隊」は、ロゴマーク、ウェブサイトのデザインに始まり、パレードのプラカードを製作するなど若年層に響く表現を工夫した。また、ダンサーくはのゆきこ氏の協力を得て、ロビイングにダンスまで取り入れた。視覚に訴えることで、ふだん社会運動に参加しない層にも、この問題が重要だと伝えることができた。 学生など、若い世代に伝える工夫は他にもあった。ちゃぶ台返し女子アクションの大澤祥子さんが中心になり「性行為における同意」をテーマにしたワークショップを東大、創価大などのキャンパスで開いてきた。ワークショップの企画運営には男子大学生も加わったため、性別を超え良心ある若い層に開かれたキャンペーンになった。このワークショップに参加した学生がさらにロビイングにも加わっている。 個々の施策の新しさや戦略性に加え、重要なことがもうひとつある。それは「できることしかやらない」と決めて貫いたことだ。社会運動のキャンペーンでは、政局や突発的な事故などコントロールできないことが沢山起きる。「ビリーブ」キャンペーンでは、刑法改正に焦点を定め「自分たちでコントロールできることで最大限の効果を出す」ことに集中した。選択と集中という、ビジネスの発想を社会運動に応用したのである。 「ビリーブ」キャンペーンに参加したメンバーたちの今後の課題は、6月の刑法改正に盛り込まれた「3年後の見直し」をいかに実現していくか、である。改正は大きな一歩であった。同時に、改正後の刑法もまだ、暴行や脅迫がないと性犯罪とは見なされない、という点などでまだ改善の余地がある。この課題をいかに市民社会に伝え、世論を動かしていくか。すでに次のアクションは始まっている。 【団体プロフィール】 明日少女隊 男性、女性、いろんな性、みんなが平等でHappyな社会を目指す社会派フェミニスト・アートグループ。デザインやアート通してビリーブキャンペーンを盛り上げた。ロゴ、ウェブ、プラカード、横断幕のデザインや、ブックレットの配色を担当し、アートとして、翼のマスク、ビリーブ・マーチ、女子力カフェを生みだす。ロゴの「つばさのシンボル」には、孤立しやすい性暴力被害当事者をエンパワメントするため「傷ついたつばさと、支えたいつばさ。2つがそろって初めて羽ばたく」という意味を込めた。記号からダンスでは、振付師くはのゆきこを支え、参加者を笑顔にするコミュニティ・アートを実現。 NPO法人しあわせなみだ 「2047年までに性暴力をゼロにする」ことを目指して、2009年1月に立ち上げ、2011年7月にNPO法人化。性暴力を経験した方や、その家族を対象とした自助グループ、性暴力等を経験して施設で暮らす方を対象とした講座、市民に対する啓発イベント等を手掛けてきた。刑法性犯罪改正にあたっては、2014年10月から法務省に設置された「性犯罪の罰則に関する検討会」ヒアリングに呼ばれ、現場の声を届ける。 ビリーブキャンペーンでは、これまでの活動を踏まえ、ロビイングに向けた資料作成や連絡調整、メディアとの関係構築、イベントのとりまとめ等、「縁の下の力持ち」役を果たす。 刑法と性暴力を考える当事者の会 性暴力被害者、ならびに性暴力被害を自分の事として考えるメンバーにより性犯罪の実態に即した刑法改正を目指して2015年8月に立ち上げられた。 刑法が性暴力の実態に見合った法律になるよう勉強会の開催や意見の発信を行う。2015年に法制審議会へ2回要望書を提出し、2016年5月に法制審議会のヒアリングに参加。2016年に実際の裁判例をもとに刑法性犯罪の不備を指摘した「ここがヘンだよ日本の刑法性犯罪」ブックレットを作成し、理解が深まったと好評を博す。また、日本弁護士連合会意見書への反対の要望書を行ったほか、2017年6月に参議院法務委員会で参考人として発言するなど被害当事者の視点から性暴力の実態を伝えた。 ちゃぶ台返し女子アクション 「性別に関わらず自分らしく生きられる社会」を目指したプロジェクト。女性の視点からみた生きづらさを女性自らが声を上げて変えていくことで、あらゆる性の人たちが生きやすくなると考えている。本キャンペーンでは性暴力を親しみやすく知ってもらう漫画、動画の作成や、大学生や社会人に性行為における同意を考えるワークショップを実施。市民が行動し、力を作って変化を起こす「コミュニティ・オーガナイジング」をキャンペーンで実践した。
Written by Change.org · October 24, 2017 12:30 pm -
【成功事例】現役慶応大学生が、休学費を安くした
こんにちは、Change.orgの武村です! Change.orgを使い、実際に社会を動かしている人々を紹介する「チェンジメーカーストーリー」。 今回は、2013年の秋に大学1年生でキャンペーンを始め、見事この春、大学生の間にキャンペーン成功にこぎつけた事例を紹介します。 休学費の減額を働きかけた、慶応大学3年の佐藤さんです。 大学1年生の時から留学やインターンなど、学外の活動にも興味をもっていた佐藤さんは、留学やインターンなど様々な学外の活動にチャレンジしようとすると、休学せざるおえないことに気がつきます。 しかし調べてみると、休学中も30万円強を学校に納めないといけない決まりとなっていました。 経済力の差で、留学やインターンのチャンスに差がでるのはおかしい!そう感じた佐藤さんは、休学費減額の働きかけを大学側に始めることに決めました。 今回は、その働きかけを始めたきっかけや、成功を勝ち取るまでの流れを聞きました。 上智が学費下がったんだたらやれそうじゃない?となってその場で始めることにしました。 −−佐藤さんは最初、どうして慶応大学の休学費を減額しようと思ったんですか? 2013年の秋、大学近くのガストで友達とご飯食べてたんです。休学っていう選択肢ってありだよねって、1年生ながら話していたら、休学費高いらしいよっていうことになって、すぐググって(Googleで検索して)調べました。 そうしたらChange.orgで上智大学の学費が下がったという話を知り、(慶応大学でも)やれそうじゃない?となって、その場で始めることにしました。 あと、すぐに上智のキャンペーンを始めた堀さんにFacebookでコンタクトをとって、2-3日後に会うアポをとりました。 −−動きが早いね!「やる!」となってまずどんなことから始めたんですか? まずは休学費用の全貌を調べました。そこで、2008-09年に一度働きかけた方々がいて、そこで一旦、休学費が学費全額から30万円まで下がったことがわかりました。そこの経緯を調べると、学生数人に教授がついて、働きかけをしていたみたいで。 この活動を参考に、まずは味方につける教授と、武器となる資料を作ろうということになりました。 それと同時に休学費の内訳を調べようとして、学生課の窓口に問い合わせてみたんですけど、対応がとても冷たかったのを覚えてます。 答えとしては、私の通っていた学部は在籍費が6万、施設費が27万かかるということみたいで。休学中は施設は使わないから払わなくていいですか?ときいても、ダメです、の一点張り。 在籍費について細かく調べると、大学にかかる固定資産税などをカバーするためのものらしくて、学生も負担しなくちゃいけないかなって、まだわかるんです。でも、どうして使わない施設に27万円も払わないといけないのか?というもやもやが残りました。施設費は休学費の大多数を占めるのに、その内容の不透明さに苛立ってしまって…。 調べると、理工学部や医学部は施設費がもっと高いみたいで。学部によって休学費は変わってくるみたいなんですね。一方文学部は19万。学部によってばらつきがあるのももやもやしました。 三田(慶応大学の中心的キャンパス)に電話しても、「決められてるものなんで」の一点張りで、お役所的な対応でした。 −−上智大学の休学費キャンペーンを始めた堀さんには、会ってどんなアドバイスもらいましたか? Change.orgのキャンペーンもやるといいよと言われて、すぐにキャンペーンページ作りました。 それで作ってすぐにTwitterに拡散したら、急に炎上して。賛否両論あったけど、賛同ものびました。 −−Change.orgのキャンペーンを始めた直後は、他にどんなアクションを取りましたか? 賛同してくれた人をもとに募集をかけて、大学に働きかける活動のメンバーを集めました。 そのメンバーで、嘆願書を出す時にどんな材料があれば大学が検討してくれるか考えて、休学についてのアンケート調査と、休学の効果を質的に把握するための休学経験者への聞き取りインタビューをすることにしました。 アンケートの方は量的な調査で、学生1000人から回答をもらい、休学したい人や、休学のボトルネックに金額はどう関係しているかを聞いたりしました。 とても一人でできる規模の活動ではなかく、当時のメンバー全員がいないとできなかったです。 副代表の古川拓くん、戦略担当の小原章紀くん、リサーチ担当の押尾聖人くん、餅原圭吾くん、インタビュー担当の伊賀あゆみさん、WEBデザイン担当の板部良平くん、長谷川真夏さん、大口莉織さん、千葉佳織さん、松井みちやすくん、谷口祐人くん。 インタビューに協力してくださった伊谷陽祐さん、大川晴さん、三股地平さん …など、たくさんの仲間や協力者のみなさんに支えられました。とても感謝してます。 学校の組織の上の構造はどうなっているのか全くわからなかったので、授業をとっている先生などに片っ端から話を聞きに行きました −−なるほど〜、調査は大事だね。他にはどんな動きをしてたんですか? アンケートはそれぞれ担当者をつけて進めてもらって、私は署名を届けるための窓口となってくれる教授を探すことにしました。 学校の組織の上の構造はどうなっているのか全くわからなかったので、授業をとっている先生などに片っ端から話を聞きに行って。 わかったことは、理事会に話を通すためには、教授会に話を通さないといけないということ。その教授会に出すには、キャンパスにある各学部の学部長に承認をとる必要があるんです。私の通ってるキャンパスの場合、当時、学部長は総合政策学部が川添先生、環境情報学部が村井先生という面々で。そして、その前の総合政策学部の学部長が國領先生という方で、当時はもう理事になっていて。 そこで國領先生に会ってみたら、キャンペーンにはすごく肯定的でした。理事という立場上オフィシャルに意見は出せないけれど、いろいろとサポートしてくださいました。國領先生は理事として国際担当だったので、留学しやすい環境をつくったりするためにも、キャンペーンは良いと思ってくれていたようです。 とにかく、働きかける相手の組織形態を把握することはすごく大事だと実感しました。 −−なるほど。足で稼ぐ、って大事なんだなぁ。 賛同してくれている先輩学生の方々にも片っ端から会っていって、アドバイスをたくさんもらいました。 成功したのはこのキャンペーンがあったから、とは思ってはいないですが、この流れの一部になれてよかった!って思います −−そうやってキャンペーンを開始してから、今回の成功まで結構時間がかかったけれど、その間はどんな活動をしていたんですか? 提出した資料を修正してと言われて直したり、細かく対応をしてました。 國領先生が忙しくて半年に1回くらいしか会えないので、その都度署名の伸びを報告したり、コメントを紹介して読んでもらったり。 その間、大学側でも少しずつ変化があることは國領先生から聞いてました。理事にも話が伝わっているよ、とか、Change.orgのページや、別に作っていた休学費減額のサイトも見ているよとか。それが、キャンペーンを始めた1年後ぐらいの2014年の夏〜秋にかけてでしょうか。 2015年夏〜秋頃には、学費全体の見直しがなされ始めている、という話も聞きました。でも動きはそこで一度止まってしまって。 その後すぐ、大学院生の学費が下がったので、見直しは進んでるんだなという手応えはありました。ただ、休学費用まではまだまだ時間かかるかな、と感じていたのですが、2016年冬に、休学費用が下がるといううわさが流れ始めたんです。そこで大学の窓口に普通の学生を装って電話してみたら、下がるという回答があったんです! 2015年秋〜2016年秋に休学していたので、復学したあとで下がるの!?とは思ったんですが(笑)、本当によかったです! −−学生らしく、当たって砕けろで最初にたくさん動いたのがよかったよね! −−最終的に成功した理由はどんなところにあると思う? 留学を増やしたいという大学側の思惑が裏にあったのかもしれないし、時代の流れもあったのかもしれない。だから成功したのはこのキャンペーンがあったから、とは思ってはいないですが、この流れの一部になれてよかった!って思います。 −−学生の声を出すことで学校側へのプレッシャーになっていたと思うよ。 上智の成功例とかも学校側に見せてプレッシャーかけてはいました(笑)。 […]
Written by Change.org · March 28, 2017 3:01 pm