最初の2年は、立ち上がるキャンペーンはすごく少なかったですね。「個人情報売買サイトだ」という誤解や批判も多くて、なかなか理解してもらえませんでした。とにかくいろんな人に会いに行き、キャンペーンを立ち上げてくれる人を探しました。
それから、次第に認知度は上がっていき、日本版を立ち上げて4年ほど経つ現在では、国内のべ160万人以上の方が何かしらのキャンペーンに参加してくれました。今は、Change.orgのアジア担当として、日本だけでなく4カ国を見ています。
私は、一つの社会問題にすごく思い入れがあるタイプではなく、どちらかというと、いろんな問題に関わっていたい人間です。そういう意味で、様々な人が自分の問題意識でキャンペーンを立ち上げるChange.orgは、私に合っていると感じます。
このサービスを通じて「自分で社会の問題を解決していく」という前のめりの人を増やしたいと考えています。会社のビジョンは「A world where no one is powerless」つまり、全ての人が自分の力を信じられる世界を作ることです。「何かに対して影響したいと思っていても何もできない状態」を完全になくし、自分の意見に価値があると信じて行動に移せる人、自分と社会の関係を理解して、みんなで団結すればなんでも変えられると自信を持てる人を増やしたいです。
何かの問題に対して少しずつ関わりを深めていくという点でいうと、日本で一番必要とされているのはスタートの部分ではないかと思います。署名すらしない人が多い社会の中で、いきなり何かの問題にどっぷり浸かるのは難しい。まずは多くの人が一歩を踏み出し、そこから進みたい人がどんどん前に出ていくということに意味があると感じています。
ユーザー主導のキャンペーンは難しさもありますが、一番重要なのは、みんなが社会に対して声を挙げられる状態で、ちゃんとその声が届く体制を整えることだと思います。逆に、いろんな決断に対して当事者の声がないのは、社会のあり方として問題だと思います。例えば、女性の問題に対して、女性がいない会議で政策が作られるのっておかしいじゃないですか。当事者と話しながら、当事者に影響を与える決断をしていくのは、民主主義の健全なあり方。これまでは代理民主主義で行っていたものを、テクノロジーが発展した今のこの世界なら、もっと直接的に関わるやり方があるんじゃないかなと思います。
現在の社会は、大企業や政府以外の声を反映しにくい仕組みになっていると思います。政治家や大企業で働く人はすごく頭がいいし、ばりばり働いていますが、全ての人の意見が分かるわけではありません。もちろん、悪意があるわけでもないと思います。権力側に立つ人も、社会を良くしたいという思いで動いているのは、みんなも変わらないと思うんですが、なかなかそこまで考えていられないだけ。
ただ、力がある人って、よほどのことがない限りその力を他の人には明渡さないというのは、歴史的にも明らかな事実。だから、健全なシステムを構築する上で、市民側もいろんなことを言わなくては、社会は絶対に良くならないと思います。相手の善意を信じて良くなると思っていても、それは「お任せ」しているだけであって、怠惰なことだと思うんです。自分で手を動かさないで、相手のせいにしているのは良くない。
もちろん、いろんな意見を聞くのに時間がかかりすぎて、意思決定しないのは良くないので、バランスが難しいところです。でも、本当にみんなのことを考えるはずの意思決定においては、お金と時間がない人の声をどれだけ反映させるのかってすごく大事だと思います。すでに偏ったメンバーで会議を行っているのだから、うまく組み込まないと偏った結論になってしまいますから。
だからこそ、Change.orgは、オープンなプラットフォームであり続けることが必要です。そこで、今後は世界中の一般市民の方に月額会員になっていただき、市民のサポートによって存続する状態を整えていくことになりました。市民に支えられ、市民にとって必要なプラットフォームを実現していきたいと考えています。
心から好きだと思える仕事を通じて、これからも社会に関わっていきたいですし、社会に貢献している実感を持てる人を増やしていきたいです。
ハリス 鈴木 絵美
米国人の父と日本人の母の間に生まれ、高校卒業まで日本で育つ。米イェール大学卒業後はマッキンゼー&カンパニー、オバマ氏の選挙キャンペーンスタッフ、ソーシャルインキュベーター企業 Purpose の立ち上げなどを経て、2012 年に Change.org の日本代表に就任とともに帰国。現在Change.orgアジアマネージングディレクターを務める。Change.orgが市民から直接の会費によって運営するビジネスモデルに転換したのに伴い、2017年より日本でもChange.org会員プログラムを根付かせるため奔走中。
Change.org会員プログラム
作成日:2017年01月22日